不合格のあと、沈黙の教室で——
県立高校入試。彼はトップ高に挑戦した。
うちの校舎には中3が100人くらいいて、その中でトップ高を受ける生徒は20人、そのうち15人が合格する。
彼はその、ちょうどボーダーラインにいた。
県立高校入試は中学入試と違って、不合格者の方が圧倒的に少ない。
不合格者はとても肩身の狭い思いをする。
もし自分の子どもだったら……と考えると、胸がキュッとなる。
彼も親も、リスクを十分承知のうえで、チャレンジした。
合格発表の日、彼は不合格だった。
報告に来てくれた教室で、ふたりきり。
沈黙が、長く続いた。
かける言葉がなかった。
「頑張ったな」でも「次があるさ」でも「人生これから」でもなかった。
彼の努力を、一緒に見てきた。
一緒に並走してきた。
だからこそ、結果しかいらなかった。
だから、なにも言えなかった。
でも、彼は報告に来てくれた。
そして、沈黙のあと——
「俺とお前の関係だから言うけど」
「この悔しさって、お前しか味わってない」
その言葉が出てきた。
「逆にチャンスなんだ」
誤解されるかもしれない、そう思いながらも言った。
でも、本気でそう思っていたから、伝えた。
彼は、まっすぐに受け止めてくれた。
「俺、悔しいです」
「高校も塾に通って、絶対逆転してやります。高校生になっても先生のところに通っていいですか?」
その目は、真っ赤だった。
でも、その中に灯った光は、静かに、でも確かに燃えていた。
1日も休まず、3年間走り抜いた男
実際、彼はそこから毎日塾に来た。
高校に入ってからも、1日もさぼらず通い続けた。
「授業がなくて、俺のためだけに塾を開けるような日は申し訳ないんで、言ってください。そういう時は図書館で勉強します」
そんな、大人びたことも言うようになった。
トップ高に受かった15人の中で、大学受験で九大に合格するのは1〜2人。
それが現実。
高校受験を終えると、一度止まりたくなるのが人間。
親も子も、ひと息つきたくなる。
でも本当は、そこからが本番なんだ。
高校からが勝負、投資どころは大学入試——これは本音だ。
(高校入試と大学入試を比べた場合の話、中学受験はまた別)
でもこの言葉は、合格した生徒と親の耳には届かず、
不合格だった生徒と親の“身”には、しっかりと届いた。
そして彼は走り続けた。
1年後には、あっという間にトップ合格者たちを追い抜いていた。
3年間、無心で走った彼は、しっかりと九大に合格した。
忘れられない3年間の強さ
あの不合格を起点に、
悔しさとともに火を灯し、
その火を3年間ともし続けた。
これが彼の輝きだ。
今も、ときどき会って食事をする。
九大に逆転合格したからといって、彼も順風満帆な道を歩んでいるわけじゃない。
社会の荒波にのまれ、見失いそうになる時もある。
ただ、私だけがあの輝きを見て、知ってるから、
いつでも、「おまえはできる」とわからせてやる。
悔しさを3年間、燃料にして走り続けた少年。
大学入試という一点を見据えて、
ブレずに、淡々と、ただ積み重ねていった。
大人でも難しい“持ち続ける力”を、
彼は少年のうちに体現していた。
男子の輝きは、一生もの。
大丈夫。
もう持ってるんだよ。
いつでも、思い出させてやる。

教育と人生を、ゲームのように“攻略”する。
スパルタ野球、中学受験、迷走と挫折、そして再出発。
出会いと学びを経て、たどり着いたのが今の塾のかたち。
男子専門塾「ひなたひかり塾」代表。
15年の指導経験と、自身の“攻略”体験をもとに、
特に男子に特化した個別最適な声かけ・導きを得意としています。
塾は、ただ勉強を教える場ではなく、「人生をどう攻略するか」を学ぶ場所。
楽しみながら本気で向き合えば、子どもは必ず変わる。
スプラ・サーフィン・子育て・教育を愛する本音系先生です。
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