【男子図鑑|塾長編・プロローグ】ここに来るまでの物語(小6まで)

プロローグ:本音で生きると決めた理由

プロローグ:本音で生きると決めた理由

もともと、ウソが嫌いだった。
生徒にも、保護者にも、ウソはつけなかった。
子ども扱いもしたことがない。
だからこそ、生徒たちが本気でついてきてくれたと思ってる。

でも──
人生では、ウソで裏切られた。
理不尽に、最愛の娘ふたりと引き離された。

絶望だった。
ただただ、絶望だった。
ほんとうに、すべてを失った。

そのときは、何も信じられなかった。
でも、ひとつだけ残ったものがある。
「本音で生きる」ってことだった。

それしか残ってなかった。
だから、それだけを信じて生きてきた。

やがて気づいた。
あの理不尽に思えた出来事にも、意味があった。
いまでは理解ができて、受け入れられて、すべての人や出来事に感謝している。
すべてがあったから、今の自分がいる。

そう思えるようになったのは、
本音で生きる覚悟ができたからだと思う。
そして、わずかな光を信じて進んだ先で、最愛の妻と出会い、救われた。

この価値観を受け入れてくれる人と、
本音で向き合い、本気で学び合いたい。

それが、この物語を書くいちばんの目的。
ウソのない自分を知ってもらって、
そのうえで、子どもを預けてもらいたいと思ってる。

第一章:大好きだった野球と、初めての本音 〜厳しさの中で積もっていた、気づかぬ努力と、ほんの少しの誇り〜

第一章:大好きだった野球と、初めての本音
〜厳しさの中で積もっていた、気づかぬ努力と、ほんの少しの誇り〜

(小学校〜中学入学まで)

(小学校〜中学入学まで)

野球は大好きで始めた。
でも入ったチームは、超スパルタで強豪校への登竜門。
1年で休みは正月に2日くらい。
毎日ひたすら走らされ、ミスをすれば即、懲罰のような暴力。

真夏に飲めるお茶は、水筒のフタについたコップ一杯だけ。
みんなギリギリまでお茶を注ぎ、最後の一滴まで舐めるように飲んでいた。

仲間との時間は楽しかった。
でも、大好きだったはずの野球を「楽しい」と思えたことはなかった。
それでも、親父のスパルタもありレギュラーをつかんだ。

肩を壊したのをきっかけに、野球をやめることが決まった。

最後の練習の日、なぜかレフトを守っていた。
ショートに返球したその一瞬、不思議な感覚が胸に残った。

「あれ? 野球って楽しいな」

初めての実感だった。
そしてそれは、皮肉にも“やめる”という決断のあとにやってきた。
心がしんとした。
「楽しい」は、強制の先にはなかった。

受験編:野球の次は、東大。努力は、気づかないうちに積もっていた

受験編:野球の次は、東大。
努力は、気づかないうちに積もっていた

野球をやめたとき、父に言われたのはただひとこと。

「じゃあ、東大に行け」

その瞬間、人生のレールが中学受験に切り替わった。
遊ぶことも、甘えることも許されない、受験モードに突入した。

当時、久留米附設に50人ほどの合格者を出していた中学受験塾――英進館に入った。
のちに15年勤めることになる塾だったが、もちろんそんな未来は知らない。

小学校の勉強にはそれなりに自信があった。
けれど入塾テストの問題は、まったく未知の世界だった。
「こんなの見たことない」
初めて“悪い成績”を取り、静かにショックを受けた。

その瞬間、父はトップギアに入った。
野球と同じスパルタが、今度は“中学受験”に向かった。

志望校は、九州最難関・久留米附設。
やるしかなかった。やめるという選択肢はなかった。
必死で食らいついた。

入試直前、塾内の順位は30番前後。
塾で50人合格するから、なんとかゾーン内にはいた。
だが、本番当日――
得意だった算数の「大問1の(1)」で、まさかのミス。
模試でも間違えたことのない、最初の1問。
心が崩れた。

「落ちた」と思った。
悲しくて、悔しくて、何より親父に怒られるのが怖かった。

けれど、親父は怒らなかった。
初めて、なぐさめてくれた。

そのことに、もっと驚いた。

発表までの数日間、心を閉ざしたまま学校も休んだ。
何も手につかなかった。

合格発表の日、家の電話が鳴った。
塾の先生からの声。

「合格してます!」

飛び上がるように喜んだ。
すぐに掲示板を見に行きたかったが、親父に止められた。
それくらい、舞い上がっていたのだと思う。

落ち着いてから、子供ながらふと気づいたのを覚えている。

相当、練習してたんだな。
あれだけのミスをしても、ぶち抜けるくらい鍛えられてたんだな。

努力って、自分では気づかない。
でも、ちゃんと積もってた。
そして、塾が楽しかったから、ここまでやれたんだなと小6なりに感じていた。

合格してから入学するまでの春。
空気の匂いも光の色も、今でも心に残ってる。
あの春は、生まれて初めて味わった「誇り」だったのかもしれない。

第2章(中学入学~父との決別)につづく

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この記事を書いた人
教育と人生を、ゲームのように“攻略”する。
スパルタ野球、中学受験、迷走と挫折、そして再出発。
出会いと学びを経て、たどり着いたのが今の塾のかたち。

中学受験・男子専門塾「ひなたひかり塾」代表。
20年の指導経験と、自身の“攻略”体験をもとに、
特に男子に特化した個別最適な声かけ・導きを得意としています。

塾は、ただ勉強を教える場ではなく、「人生をどう攻略するか」を学ぶ場所。
楽しみながら本気で向き合えば、子どもは必ず変わる。

スプラ・サーフィン・子育て・教育を愛する本音系先生です。

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